● 信託契約が終了したら、信託終了後の清算事務を行います。この清算事務を行う人を清算受託者と呼び、実務上は信託終了時点の受託者がそのまま清算受託者になると定められています。清算受託者は信託財産にかかる債務と諸費用を支払ったあとで、残余財産を帰属権利者に引き渡す義務を負います。このときあらかじめ清算受託者に不動産の売却権限を与えておくと後の処理がとてもスムーズに進みます。例えば、子供たちは皆独立して別の場所に家を建てているので、両親が住む実家は両親が亡くなった後は売却処分して代金を子供たちで分ける予定の場合、通常であれば子供全員で一度共有の相続登記をして、全員で売却することになります。清算受託者にこの不動産の売却処分権限まで与えていれば、清算受託者が単独でこれができ、手間とコストが全く違ってきます。将来の不動産の処分まで見越した設計ができるのも信託の利点です。
● 信託契約が終了したときに残った財産の受取人を「残余財産の帰属権利者」と言います。信託には遺言代用機能がありますので、受益者が亡くなった後の財産の帰属先を決めておくことができます。個別の財産ごとに任意に受取人を指定することもできます。一方、信託契約が合意のもとで終了した場合は、「信託終了時の受益者に帰属させる」とします。なお、帰属権利者の指定が無かったり指定された人がすでに亡くなっていたりしたら、信託法182条によって受取人が決まります。遺言代用機能を効果的に使うには様々なケースを予測しながら受取人を決めるようにしましょう。