信託契約書はオーダーメイド

 行政書士が作成する書類はたくさんあります。許認可関係の書類は、要件さえ適合していれば書類として完成するものも多くあります。契約書にしても、中身は定型文を使い回しているというものも少なくありません。つまり同じ業務内容であれば、内容は似てくるものもそれなりに多いということです。

 しかし家族信託に限ってはそれは当てはまりません。一つとして似たようなケースは無いからです。完全なオーダーメイドで契約書を作っていくものです。なぜこれほどの違いが生じるのかというと、契約書作成に当たって考慮しなければいけない登場人物とその人たちの思いが多いからです。委託者、受託者、受益者だけで無く、予備的受託者や信託財産の承継者全員、信託監督人、第二受益者、それ以外でも最低家族全員の思いを考慮する必要があります。それらの人の気持ちを踏まえた契約内容にしておかないと、将来その人が信託契約上表に出てきたときに契約の当初の目的が果たせなくなります。契約書を作成した時点で不備があったとしてもそれが判明するのは相当先ということは十分考えられます。

 よくネットの情報で契約書のフォーマットの類いが載っていることがありますが、あれは一例であってそのまま活用するものではありません。時間がかかっても良いのであれば、じっくり1から契約書を作成することをおすすめします。

 家族信託の契約書は家族間の契約ですので、一般人である家族が理解できる内容で無ければいけません。そして家族信託の根拠法は信託法となりますので、信託法で定めていることはあえて家族信託契約に盛り込む必要はありません。家族信託契約の内容はできるだけシンプルにするべきです。ある専門家の意見は、条文数は多くても25条だということです。

 家族信託を締結する本来の目的は常に念頭に置いて契約書の中身を作っていきます。例えば、親が将来認知症になったときに備えるのであれば、認知症になって時の状況を想定してあらゆる場面に対応できるように受託者の権限を設定しておかなければなりません。さらに想定外の事態が発生したときに備える工夫も必要になります。このあたりは慣れた専門家の意見も参考にすると良いと思います。

 家族信託契約は親子間で結ぶのが代表例ですが、亡くなる順番は決して年齢順ではありません。それも踏まえて予備的な受託者は定めておくべきと言えます。もし定めがなく、予備的受託者が必要となったときに親の判断能力が低下していれば、もはや新たな受託者を指定する事ができず、信託契約が終了してしまうことになりかねません。そのような事態は決して当初の目的に合致するものでは無いはずです。