自筆証書遺言と公正証書遺言①

 自筆証書遺言と公正証書遺言について話をして欲しいと、ある団体の代表者の方からご依頼をいただきました。その団体では定期的に研修会を行っており、次回10月中旬に行う研修会のテーマが「遺言書」とのことです。このようなお話をいただくことはとてもありがたいことだと思い感謝しております。もちろん快諾しました。同時に、皆様が貴重なお時間を割いて参加される研修会ですので、きちんとした話をするべきだと考えます。そこで自分自身の知識の再確認の意味を込めて、遺言書についてポイントを再確認していきます。

 研修会では特に、・自筆証書遺言と公正証書遺言の作り方 ・検認 ・自筆証書遺言の保管制度 の3点に絞って話をして欲しいとのことです。今回は自筆証書遺言書の作り方について再確認していきます。

 【自筆証書遺言書の作り方】

 (ポイント1)

 民法968条では、自筆証書遺言は、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない。」とされていまし たが、平成30年の民法改正で目録は自署が不要になりました。不動産や預貯金の表示をする際には必ずしも自署をする必要はなく、パソコンで作成したり、他人に作成してもらったり、相続財産を特定する書類(例えば不動産登記事項証明書や通帳)の写しを添付する対応が可能になりました。なお、自署でない目録を添付する場合は、その毎葉に署名押印が必要です。

 (ポイント2)

 自署による日付氏名があることです。日付が特定できるのであれば、「遺言者〇〇〇〇の〇〇回目の誕生日」等の記載でも有効ですが、「〇〇年〇〇月吉日」とした記載は無効との判例があります。

 (ポイント3)

 押印があることです。実印である必要はなく、認め印でも可です。拇印や指印でも認められた判例があります。

上記3点のポイントを押えておけば基本的に自筆証遺言は作成できます。ただし、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用する予定であれば、作成当初から保管制度で指定されているサイズの用紙(A4)を使用する必要があります。また、用紙の余白の取り方も指定があります。さらに、ボールペンなどの消えない筆記具を使用する必要がありますので注意が必要です。