遺言改正④

 平成30年の民法改正では、遺言執行者の権限について、これまで明確化されていなかった部分が明確化されました。改正された条文では以下のように記載されています。

 民法第1012条第1項

 「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」

 条文中の 遺言の内容を実現するため という文言が追加されました。これにより遺言執行者は遺言の内容を実現することが責務であって、相続人の利益のために職務を行うのでは無いことが明確になりました。

 また、これまで遺言執行者に指定された者は、やむを得ない事由がなければその職務を断三者に復任することができませんでした。このため専門知識のないものが遺言執行者に指定された場合に不都合が生じたり、そもそも民法上の他の法定代理人は一般に復任権を有することとのバランスを欠くとの理由で問題視されてきました。そこで改正民法によって、原則として復任権を認めました。

 民法第1016条第1項

 「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」

 遺言執行者の行為の効果は相続人に帰属します。また、相続人は遺言の執行を妨げる行為をすることが出来ません。そこで改正民法では、下記のように遺言執行者に相続人らへの通知義務を課しています。

 民法第1007条第2項

 「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。」

 遺言執行者になれば、このように通知義務が発生します。戸籍から法定相続人を調べて、全員に通知を出す作業はケースによっては相当労力が必要です。いままで当事務所で遺言書の原案作成に関与したご依頼者様の関係人の方には、遺言執行を行う際、依頼があれば受任できる旨お伝えしています。