遺留分とは、相続人の一部の人が、一定の割合で遺産に対して有している権利です。一部の人とは亡くなられた方の兄弟姉妹を除く、配偶者、子、直系尊属です。一定の割合とは、原則2分の1ですが、直系尊属のみが相続人の場合は3分の1です。その一定の割合が全体の遺留分となり、それを法定相続分に応じて分けたものが各自の遺留分となります。例えば相続財産が1億円、相続人が配偶者と子供2人の場合は、全体としての遺留分は1億円×2分の1=5000万円です。配偶者の遺留分は5000万円×2分の1=2500万円。子供の遺留分は5000万円×2分の1=2500万円。さらに子供1人の遺留分は2500万円×2分の1=1250万円です。実際には相続財産は負債も含めて計算されますのでその場合はもっと複雑な計算になります。
遺留分を有する者が実際に受けた財産が遺留分より少ないとき、その差額=遺留分侵害額に相当する額の支払いを請求する権利を、遺留分侵害額請求権といいます。請求する相手方は、受遺者・受贈者とその包括承継人です。請求の方法は相手方に対する意思表示によって行えば良く、裁判を起こす必要はありません。
遺留分侵害額請求権という制度は平成30年の民法改正で設けられた制度です。それまでは遺留分を侵害された者は遺留分減殺請求権を行使していました。遺留分減殺請求権が行使されると物権的効果が生じ、その限度で遺贈等の目的財産が遺留分を侵害された者に帰属すると考えられていました。そうすると例えば、土地を遺贈された人に対して遺留分減殺請求を行えば、その時点で土地をその人と共有することになります。共有するとその土地を売却するときは共有者全員で行わなければなりません。通常、遺留分減殺請求を行えば、人間関係はうまくいきません。結果として共有財産の処分が困難になってしまうという状態が発生していました。民法改正で設けられた遺留分侵害額請求権では、行使しても遺贈は有効のままです。あくまで金銭で処理しようというものです。
遺言書を残す際には、遺留分というものも念頭に置きながら分け方を検討されると良いでしょう。