相続人は相続開始により、被相続人の権利義務を相続分に応じて承継します。マイナスの財産も相続分に応じて承継します。しかしどのような遺言の内容でどのような相続分になっているのかは債権者には分かりません。そこで従来から、相続分の指定は債権者には対抗できず、債権者から法定相続分の債務の履行を請求されたときはそれに応じなければいけない、という判例がありました。平成30年の民法改正でこの点が明文化されました。

 民法第902条の2

  被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、法定相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りではない。

 極端な例で言えば、プラスの財産をもらわなかった相続人でも被相続人に借金があれば、法定相続分に応じて請求される可能性があります。請求されれば支払わなければいけませんが、支払った金額はプラスの財産を相続した他の共同相続人に求償(請求)することができるのです。

 なお、債権者の側から指定相続分に応じた債務の履行を求めることはできます。