相続改正⑧

 これまで、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは」遺産分割協議において寄与分を主張することが出来ました。しかし主張できるのは「共同相続人中」に限られていましたので、相続人の配偶者などがいくら被相続人の生前に療養看護に努めていたとしても報われてきませんでした。そこで平成30年の民法改正では、相続人以外の者の貢献を考慮する方策について規定が設けられました。改正後の民法第1050条は以下のように規定されました。

 「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(中略)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払を請求することが出来る。」

 ポイントは ・無償 ・被相続人の親族 ・特別の寄与 という点です。無償ですので何らかの報酬を受けてい無いことが必要です。親族とは6親等内の血族と3親等内の姻族のことを指します。よって例えば家政婦さん等は対象外です。何を特別の寄与とするのかは、被相続人との身分関係に応じて、その貢献が一定程度を越えることを求められると考えられます。

 上記の通り特別寄与者は、相続人に対して特別寄与料を請求することが出来ますが、協議がまとまらないときは家庭裁判所に対し、協議に代わる請求をすることが出来ます。また、特別寄与料の請求には時効があり、

 ・特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから六ヶ月を経過

   または

 ・相続開始の時から一年を経過

したときは請求できません。民法改正によって特別寄与の規定ができましたが、特別寄与者は遺産分割協議に参加することは出来ず、相続人に対して請求することになります。そして当然以下のような考えが生じます。

 ・相続財産全体を把握することが困難であるのに特別寄与料の算定が果たしてできるのか

 ・相続人に請求することで将来の親族関係に影響はでないのか

 ・裁判上請求するとなれば関係性は悪化する可能性は高い

 ・時効期間が短い

 よって現時点で特別寄与の請求はあまり使いやすいとは言えないと考えます。相続人以外の人に感謝の気持ちをして相続財産を残したいと考えるのであれば、遺言を作成し、その旨記載しておくことを強くおすすめします。