【公正証書遺言の作り方】
前回は自筆証書遺言の作り方について簡単に触れましたので、今回は公正証書遺言の作り方です。公正証書遺言を作成するのは公証人です。従って遺言者はご自身で公証役場に行き、遺言書の作成を依頼することになります。事前に専門職へ相談して、専門職にある程度準備を依頼して作成する方法もあります。以下基本的な流れを記します。
① 相談 (公証役場または専門職)
② 遺言の趣旨のヒアリングと必要書類の案内(公証人または専門職) ※①と②は同時に行うことが多い
③ 原案作成(公証人または専門職)し、遺言者が確認と修正等+証人の手配の検討
④ 公証役場訪問日程の調整と見積書の提示+証人手配
⑤ 作成日当日に公証役場へ行き、証人2人立会いもとで、遺言の趣旨を公証人に口授し、作成された遺言書を公証人が読み聞かせし、間違いなければ遺言者と証人が署名捺印して完成
公証役場は相談料は無料です。原案の送付や修正などのやりとりは複数回必要になることもありますが、メール等で対応してくれる公証役場もあります。証人2人は遺言者が手配しても良いですし、公証役場へ手配をお願いすることもできます。その場合証人への報酬が発生します。必要書類は一般的には遺言者の印鑑登録証明書、戸籍謄本や相続財産に関する不動産全部事項証明書・通帳の写し、相続人以外に遺贈する場合はその人の住民票等です。専門職へ依頼した場合、上記①~④のほぼ全てを専門職が行うことができますので、遺言者は⑤の時の一度だけ公証役場へ行けば済みます。何らかの事情で公証役場へ出向けない場合は、公証人が遺言者のもとへ訪問してくれます。見積金額は相続財産総額と分け方等により算定が変わりますので、遺言内容が決まり、ある程度資料を提出した後で提示されます。
公正証書遺言の原本は公証役場へ保管されます。遺言者には謄本が渡されます。部数もあらかじめ伝えた希望部数発行してもらえます。実際の相続手続は原本ではなく謄本で行います。原本の保管期限は通常20年間ですが、高齢化が進んでいることもあって、今では遺言者が120歳になるまで保管される運用になっているようです。
公正証書遺言は保管制度を利用していない自筆証書遺言と違い、裁判所の検認が不要です。また、作成するのは法律のプロである公証人ですので、内容に不備があることはまず考えられません。公証役場への費用がかかり、専門職へ依頼した場合はそちらへの費用も発生するという費用面でのデメリットはありますが、間違いのない遺言書を遺すのであれば公正証書遺言をおすすめします。