誰かが亡くなり相続が発生しても、相続人がいない、もしくは相続人がいることがはっきり分からないことがあります。しかし現実に相続財産が存在する場合は、それを管理するために家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。亡くなった人が誰なのか分からず、親族関係が不明なときも同様です。大まかな手続きの流れは以下の通りです。

  家庭裁判所による相続財産管理人の選任及びその広告(2ヶ月間)

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  相続財産管理人による債権者・受遺者に対する請求申出の広告(2ヶ月以上)

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  相続財産管理人又は検察官による相続人捜索の広告(6ヶ月以上)

 ここまでやってもまだ相続人が見つからない、もしくは財産が余っているときに「特別縁故者」が登場します。民法第958条の3第1項には「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」と規定しています。特別縁故者は上記の最後の広告の期間満了後、3ヶ月以内に財産分与を請求しなければいけません。なお、特別縁故者もいない場合は民法第959条により相続財産は国庫に帰属します。

 このように、特別縁故者が財産を受けられるようになるまでには相当な時間と手間がかかります。民法第958条の3が定める特別縁故者の定義によれば「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」となっています。従って被相続人にとって大変お世話になった人や常に身近にいた人が当てはまるのだと予想します。そうであればあらかじめ遺言でそういう人に財産が残せるようにしておくことが、財産の移転もスムーズにできますし、感謝の気持ちも伝えることができるのではないかと考えます。