清算型遺言とは、遺産の全部または一部を換金して、相続人等には金銭で分配する方法を採用する遺言です。核家族化が進み、子供たちはそれぞれ自分の家を所有していることが多くなっています。親が亡くなり、実家の土地建物を相続により取得しても負担になるケースもあります。配偶者に先立たれて子供もいない高齢者の場合は、兄弟姉妹が相続人になることがあります。財産を一括して換金し、兄弟姉妹に分配したいという需要も出てきそうです。このように清算型遺言は、時代の変化により現れてくるニーズに応じた内容となっています。そのため、執行段階での事例は比較的少なく、執行時に当該遺言書を提出する予定先(金融機関や法務局等)には遺言書作成段階から確認しながら進めることが必要です。

 清算型遺言においても、遺言執行者の指定は重要です。特に不動産を売却して換金、分配する手続きを遺言執行者だけでできるのがメリットなので、遺言執行者の指定は必須です。不動産を換金して分配する手順としては、不動産を法定相続人に法定相続分で相続登記する→買主が決まれば、遺言執行者と買主で売買契約をし所有権移転登記をする→売却代金を遺言書で定めた相続人に分配する、となります。この一連の手続きを遺言執行者単独で進めることができます。もし遺言書が無い状態で相続が発生したら、相続人全員で話し合いが必要になり、話し合いの内容に応じた遺産分割協議書の作成も必要となります。

 世間では空き家問題が深刻になっています。空き家が生じる原因の一つは、やはり生前対策をとらなかったことでしょう。遠方に住む相続人には空き家の管理は十分にはできません。処分したくても家屋の取り壊し費用が負担になり躊躇し、結果として放置していることも考えられます。遺言書を残す目的には、残された遺族にできるだけ負担を掛けないようにする、ということもありますので、清算型遺言は今後需要が増えていくと考えられますし、相談を受けた専門職の立場からすれば、提案する機会が増えるのではないでしょうか。