相続改正①

 平成30年の国会で民法の相続法分野が改正されました。近年では大きな改正ですので、数回に渡ってご紹介していきます。まずは遺産分割における配偶者の保護に関することです。これまでは、夫婦の一方が亡くなったときに、遺された配偶者のその後の生活をどのようにしていくかが問題になってきました。今回の改正点は、遺された配偶者に配慮したものになっています。

 【配偶者に対する「持戻免除の意思表示」の推定】

 遺産分割を行う際、一般的には相続人に対する贈与や遺贈があった場合、それを遺産の前渡しとし、それらの財産を相続財産とみなして法定相続分を計算します。このことを持戻しといいます。ただし被相続人が贈与等について反対の意思表示をしたときは、元戻しは行いません。改正民法では

  ① 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、他の一方に対し

  ② その居住の用に供する建物またはその敷地を遺贈又は贈与(贈与等)したときは、

  被相続人がその贈与等について持戻免除の意思表示をしたものと推定するとしました。このような贈与等は、遺された配偶者に対してその後の生活保障を手厚くする趣旨で行ったものであり「持戻し」をする意思が無いと通常考えられるからです。

 上記の様な法改正がなかったらどのような事態になるのか、事例を挙げて検討します。相続財産に不動産(評価額1000万円)と預貯金(1000万円)があり、相続人が配偶者と子供の計2名の場合で考えます。相続人2人の法定相続分はそれぞれ2分の1ずつです。遺された配偶者にとっては住み慣れた不動産が無くなれば困りますので不動産を取得することになります。そうして子供が預貯金の1000万円を取得します。その結果、配偶者は住む場所は確保できたけど生活費が無い状態になりかねません。このような事態を避けるために今回の法改正がされました。