相続改正②

 平成30年の民法改正では、相続において遺された配偶者に考慮する改正がいくつかあります。今回その中の「配偶者居住権」について取り上げます。

 例えばご主人名義の家に長年住み続けている夫婦がいて、ご主人が先に亡くなってしまった場合、遺された配偶者がその家に住み続けるためには、その家を相続によって取得するか、もしくは相続によって取得した他の相続人との間で賃貸借契約や使用貸借契約を締結しなければいけません。しかし自らが相続によって取得したとしても、家の価値が高額であればその他の金銭を取得することができずにその後の生活に困ることになりかねません。また借りるにしても、必ず貸してもらえる保証はありません。そこで改正民法では新たに「配偶者居住権」というものを作り、配偶者が同じ家に住み続けたいというニーズに応えられるようにしました。

 配偶者居住権を成立させるための要件は以下の2点です。

  ① 配偶者が、相続開始の時点で、被相続人の財産に属した建物に居住していたこと

  ② 次のいずれかに該当すること

    ・遺産分割で配偶者居住権を設定したとき(金額については他で記載します)

    ・配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

    ・家庭裁判所の審判で配偶者居住権を設定したとき

 上記の要件を満たすとき、居住建物全部について原則終身・無償で使用および収益する権利を取得できます。「収益」も可能なので、建物種勇者の承諾を得れば第三者に賃貸することも出来ます。

 居住建物の所有者には、配偶者居住権を取得した配偶者に対して、その設定の登記を備えさせる義務があります。その登記をしたあとは、配偶者は、その家について物件を取得した者やその他の第三者に対抗することが出来ますし、占有を妨害する者に対しては妨害排除を、占有する第三者に対しては返還請求が出来ます。

 配偶者居住権は原則として終身継続します。例外として次の場合は消滅します。

  ① 遺産分割協議、遺言、家庭裁判所の審判で別段の定めをした場合

  ② 配偶者が、用法遵守義務に違反し、または、建物所有者の許諾無く改築・増築もしくは第三者に使用収益させた場合で、建物所有者が相当の期間を定めてその是正を催告したがその期間内に是正がされず、建物所有者が配偶者に対して配偶者居住権の消滅を通知したとき