遺留分改正①

 遺留分制度とは、被相続人が有していた財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人に保証する制度です。この保証された遺留分は遺言によっても変えることはできません。従って仮に遺言で遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求をすることができました。遺留分減殺請求をされた受遺者または受贈者は、遺留分権利者に対して現物を返還するか、それに代えて価額賠償をするか選択していました。

 遺留分減殺請求権が行使されると、物権的効果が発生し、遺贈等は遺留分を侵害する限度で失効し、目的財産が遺留分権利者に帰属するとされていました。この結果、例えば不動産であれば受遺者等と遺留分権利者の共有状態になります。共有となれば将来不動産を処分する際に共同で手続する必要があり、処分が困難になる可能性が発生し不都合が生じていました。また、遺留分権利者にとっては最低限の相続分の確保ができれば十分であり、必ずしも物権的請求権まで必要ないと考えられていました。そこで平成30年の民法改正では遺留分に関して金銭債権化する改正がされました。

 民法第1046条第1項

 「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者・・・又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。」

 この規定により、遺言書による遺贈等の効力を維持したまま、遺留分権利者が金銭請求権を行使することとされました。従来の遺留分減殺請求権という呼び名は無くなり、遺留分侵害額請求権となりました。この遺留分侵害額請求権を行使する方法は、必ずしも裁判上で行使する必要はありません。権利の行使を相手方に伝えることで行使することが出来ます。そして行使を受けた受遺者等は遺留分権利者に対して金銭債務を負います。

 遺留分侵害額請求権には期限の制限があります。具体的には、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから一年間行使しないときは時効によって消滅します。相続開始時から10年経過した時も同様です。

 相続放棄は相続開始前には出来ませんが、遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り相続開始前に出来ます。