● 通常、信託契約は長期間に亘ります。受益者連続型であればなおのことです。受託者としても病気や事故などで受託者の仕事ができなくなることは視野に入れておくべきです。そのために予備的な受託者を指定しておくことをおすすめします。実務上では第三、第四受託者まで決めておくこともあります。もし契約段階で予備的受託者を決めることができなければ、先で必要になった時に契約変更をして予備的受託者の定めを設ける、若しくは後任の受託者を指定する方法を定めておくことも一つの方法です。なお、後任受託者に指定された人は将来必要となった時に実際に後任の受託者として就任をするかどうかの判断をします。このときに断られることの無いように事前に家族会議等でしっかり了承してもらっておくことが大事です。

● 何らかの理由により受託者の任務が終了した場合、後任者が信託事務を開始するまで空白期間が生じます。そのリスクを最小化するために・前受託者・前受託者の相続人・前受託者の成年後見人または保佐人は、知れたる受益者に対して受託者の任務が終了した旨を通知しなければいけません。同時に後任者が信託事務を開始するまで信託財産を保管し、引継に必要な行為をしなければいけません。そして後任の受託者は金融機関の口座の変更とお金の移動をする必要があります。このとき信託口口座であれば引継はスムーズにできます。一方、前受託者の個人名義の口座を便宜上信託専用口座にしていた場合は前受託者の死亡が原因での受託者交代の時に問題が出ます。通常の相続手続きを踏んで解約払戻しをしなければならないからです。相続人間で争いがあれば相当時間がかかることもあります。その対策として、キャッシュカードの保管場所と暗証番号を後任の受託者と共有しておくというやり方もありますが、万全ではないでしょう。当初から信託口口座を利用しておくことをおすすめします。あとは不動産登記簿の受託者変更の登記をします。建物が火災保険に加入していれば必要に応じて保険の契約者変更の手続きをします。