家族信託で出来ること

 父親を委託者兼当初受益者とし、第二受益者を母親とします。子の1人を受託者とした場合に、家族信託を締結しておけば時間の経過とともにどのような効果があるのか検証してみます。

①父親が元気な状態の時

 家族信託を締結した時点で、父親の財産の実質的管理者は受託者である子になります。財産管理に関しては委任や管理委託の機能が生じます。単独で財産管理委任契約を締結したのとほぼ同じです。信託財産に賃貸不動産があれば、子に管理運営を教えていくこともできます。

②父親の判断能力が低下したとき

 父親が病気や事故等で判断能力が低下しても、受託者が信託財産を管理していくことに影響はありません。何も対策を取っていなければ、ここで成年後見制度の利用を検討することになります。もしくは何もしないという選択もあります。①の時に財産管理委任契約のみで父親の財産を管理していたのであれば、父親の判断能力が低下した時点でその契約は失効しますので、やはりその後は成年後見制度の利用を検討することになります。家族信託はこのような場面で成年後見制度による財産管理の代用機能があると言えます。

③父親の相続が発生したとき

 父親が死亡して相続が発生した後は、受託者である子は、信託契約で定めておいた第二受益者の母親のために信託財産を管理していくことになります。この場合は信託財産の承継者の指定という遺言の機能を持つことになります。

④母親の相続が発生したとき

 母親の死亡で信託契約が終了し、その時点での残余財産について他の子どもも含めそれぞれ帰属させることを信託契約で定めることで、二次相続以降の資産の承継先を指定することが出来ます。これは遺言書を作成しても実現不可能な事であり、家族信託だからこそ実現できる事です。

 まとめると、家族信託は、財産の管理・運用・承継先の指定に関しては、元気なうちに備えておけば生涯安心できる制度だと言えます。