時代のニーズに応じて利用価値の高い家族信託ですが、それでもデメリットや注意すべき点はあります。
〇税金面
保有する財産を信託財産に組み入れたとしても、税務面では何も変化はありません。何らかの税金対策が取れるわけではありません。
〇損益通算の問題
信託財産は損益通算ができません。従って、不動産などで損金が発生したとしても、他の所得と相殺が出来ませんし、翌年に繰り越すことも出来なくなります。
〇初期投資の問題
家族信託の設計は専門家の関与無しで行うことは困難です。できないことはありませんが、自己流はおすすめしません。それだけ専門性が高い契約だからです。よって家族信託契約を始める際には専門家への報酬がそれなりに発生することを予定しておきましょう。契約内容のボリュームもありますから、打ち合せも複数回行う必要があります。契約書を公正証書で作成する場合は、専門家への報酬に加え、公証役場への支払が発生します。このように家族信託は初期投資と手間がかかります。しかし、成年後見制度と異なり、契約終了までのランニングコストは圧倒的に抑える事ができます。この点は別に記載します。
〇対応できる専門家が少ない
金融機関でも信託口口座の開設に対応していないところが多いのと同様に、専門家でも対応できる事務所はまだ少ないのが現状です。ネットで検索してもあまりヒットしないことからも分かります。行政書士の実務研修会でも家族信託を扱う講座は私が開業してから見たことがありません。専門家を探す際にはホームページをよく確認することも大切です。