家族信託を行うメリットは、大きく分けて2つあります。1つは生前の財産管理のメリット、もう1つは相続発生後の資産承継のメリットです。
生前の財産管理におけるメリットは、判断能力が低下したあとでも成年後見制度を利用することなく財産管理が実現できることです。この点が最も大きいメリットです。なぜメリットがあるのか知るには、いかに成年後見制度が窮屈な制度なのかを理解する必要がありますが、ここでは詳しくは述べませんが、成年後見制度は家庭裁判所が監督する後見人によって本人のためだけに財産を使うことが許されます。本人の家族の意向はなかなか反映されません。しかも後見人への報酬が生涯発生し、ランニングコストがかかります。その点家族信託は、定めた目的の範囲であれば家族である受託者が柔軟な管理をすることが可能です。
家族信託のもう1つのメリットは、二次相続以降の承継者まで指定できるという点です。このことは事業を営む方や地主、開業医などの悩みに応えられる可能性があります。遺言書ではできなかったことが家族信託ではできるようになったということは大きなメリットに違いありません。
その他のメリットとしては、財産の受取人の事情に応じた財産給付ができることや、信託契約の内容の撤回や変更に一定の制限をつけたうえで遺言代用機能を使うことで、実質的に生前の遺産分割協議を確定させることができる、という点が挙げられます。