受託者不存在に備える

 家族信託の基本的なスタイルは、老親を子供世代が支えていくということです。しかし世の中若い人が高齢者より常に健康とは限りません。不慮の事故や病気で突然受託者としての業務を行えなくなる事態も想定しておかなければなりません。

 信託法によると、受託者が不在になったときは委託者が後任の受託者を指定する事が出来るとされています。しかし、その時点で委託者の判断能力に問題が生じていたら、もはや後任の受託者を指定する事は出来ません。それでも後任の受託者を指定するためには委託者に後見人を就けてから受託者を指定するしかありません。その方法は現実的ではなく、当初の当事者の想いからかけ離れた状態となり不本意でしょう。また、後任の受託者が不存在の状態で1年間経過すると、信託契約は強制的に終了します。

 上記の様な事態に備えるため、信託契約設計段階では予備的受託者を指名しておくことをおすすめします。誰を指名するかは、家族会議等を重ねてみんなが納得した上で行いましょう。予備的受託者となる人に事前に打診をせずに勝手に契約書上で指名したら、いざ後任の受託者を指名する段階になって就任を拒否される事態になりかねません。

 もし信託契約書作成段階で後任受託者が決まらなければ、一旦はそれで信託契約をスタートさせて、将来検討が進んだ時点で信託契約を一部変更することで対応できます。また、将来親の判断能力が低下した時に備えて、後任受託者の選任方法を別に定める方法も有効です。例えば「信託監督人が後任の受託者を指定する」という感じにしておきます。

 予備的受託者は、現在の受託者が信託業務を行っている間は、実質的には何もすることはありません。現在の受託者が健康なうちに信託契約が終了すれば、一度も信託業務を行うことはありません。いざとなったら家族の助けになる存在です。