● 過去の投稿でも、信託契約は委託者が元気なうちに締結しておくものだと説明しました。ここで元気なうちとは判断能力がしっかりしているうちとも言えますが、信託契約の締結に必要な判断能力は財産、託す人、託す目的が理解できていることです。仮に認知症の症状が出ていてもそれらがしっかり理解出来ていれば信託契約を締結できる可能性があります。

● 信託契約は私文書で作成することもできますが、公正証書で作成するべきです。理由は、契約の内容が長期間に亘ることが多い、財産の承継先を何世代も先まで指定できるのでその事に不満を持つ人から契約の有効性についてクレームが出たときに対処しやすい、紛失の心配がない等です。信託に限らず大切な文書や契約書は公正証書で作成することをおすすめします。

● 委託者と受益者が異なる場合、受益者となる人にあらかじめ承諾を得ておく必要はありません。信託法により受益者に指定された人は当然に受益権という権利を取得するからです。従って認知症の高齢者や幼い子供でも一方的に受益者に指定して財産を渡すことができます。ただし受益者に対して受益者になった旨の通知は必要とされています。

● 信託契約は必ず一つの契約にしなければいけないということはありません。目的別、財産別、承継者別、管理者(受託者)別などに分けることもあります。目的別では委託者の生活サポートと資産運用で分けることが一般的でしょう。財産別では現金と不動産で分けることが考えられます。契約を分けた時の注意点として、契約書をまたいだ損益通算はできないことを認識しておきましょう。