信託監督人を就ける場合でも、最初から就ける必要性はないということもあります。そのようなケースに対応するために、信託監督人が就任するタイミングを様々なケースに応じて決めることが出来ます。契約開始時から就けないケースでは下記のような希望に添うことが出来ます。
〇 受益者である親の判断能力が低下してから信託監督人に就任してもらいたい
受益者たる親が元気なうちは、自分が受託者の信託事務を監督する役目を果たすことが出来ます。しかし将来病気等が原因で判断能力が低下した時には、監督業務は困難になるため、そのような状況になったときから信託監督人に就いてもらいたいという要望に応えることが出来ます。この場合の注意点は、契約書上で監督人業務の開始時期として信託監督人が「就任を承諾したとき」という表現にするということです。ここを「受益者の判断能力が低下した時」という表現にしてしまうと、開始時期が不明確となります。
〇 第二受託者が就任したときに信託監督人に就任してもらいたい
最初の受託者は信託事務を遂行するのに何も問題や心配が無いが、第二受託者が就任した時は不安があるので監督人に就任してもらいたいという要望に応じた内容です。
家族信託の事務は成年後見と比較すると簡易で簡潔です。しかし不慣れな人にとってはそれなりに負担にもなります。そのようなとき、相談できる相手として監督人のような存在があれば気が楽になるのではないでしょうか。呼び方が「監督人」ですのでいかにも監視している立場の人のような気がしますが、信託監督人は受託者とともに信託の目的を果たすため、一緒に協力しながら信託事務を進めていく同伴者とも言える立場の人なのです。