家族信託の主な登場人物は、委託者 受託者 受益者の3名です。委託者と受益者は同一人物とするケースが多いので実際には登場人物が2名という信託が多いと予想します。登場人物は基本的に家族関係にあり、お互い信頼できている関係ですが、時には信託事務をきちんと行っているかどうかチェックする必要があります。委託者である親がまだ元気なうちは、委託者兼受託者自身がチェックすれば良いのですが、高齢になるとそうもいきません。そこで、受託者の信託事務をチェックする「信託監督人」を置くという方法があります。
親族後見人が、親の財産を使い込んだという話は聴いたことがあると思います。家庭裁判所が関与する後見制度ですら不正が絶えないのが現状です。家族信託でも同様のリスクはあると思っておいた方が良いと言えます。子供が複数人いて、そのうちの誰か1人が受託者となっているケースにおいても、受託者のきょうだいから余計な疑いを持たれないため、自身の身を守るために信託監督人を置くという選択肢はあります。
信託監督人は家族の中から選ぶことも可能です。しかし先に述べたように他の家族に対して、受託者としての業務をきちんと行っていることを示す意味でも、信託監督人は家族以外の人の方が望ましいと言えます。仮に身内の誰かに信託監督人をお願いして就任してもらったとしても、客観的にかつ冷静に監督業務を行うことは困難でしょう。そして、監督人には受託者を解任する権限を持たすことが出来るため、身内の争いごとが発展して受託者を解任するような事態を招きかねません。そうなると当初の信託の目的から大きく外れてしまいます。
信託監督人は必置ではありません。監督人を就けなくても問題が起こらないケースはたくさんあります。信託契約設計段階の家族会議では監督人をどうするのかもしっかり話し合うことをおすすめします。