● 信託法に受託者の人数の規定は無いので受託者は複数人置くことができます。実務上は2人というケースも多いようです。例えば1人が委託者の日々の生活費や小遣いといった金銭管理を担い、もう1人が普段は使わない大きな額の金銭を管理しているというケースです。受託者へ支払う報酬が増えるという懸念もありますが、契約で無報酬とすることも可能ですし、2人で負担を分けられるので利点はあります。そして信託法には、「受託者が2人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする」との定めがあります。そのため受託者は信託財産の分割を求めたり、持分があるとしてこれを譲渡することができません。更に注意するべきは金融機関で信託口口座が作れないということです。対処法として受託者のどちらか一方の個人名義の口座を作り、それを信託専用口座にして管理します。その場合は口座名義の受託者が先に亡くなることのリスク対策も必要です。

● 受託者の義務の1つに、信託財産に係る帳簿その他の書類の作成や、毎年一回、一定時期に財産状況開示資料を作成し、受益者に報告しなければならない、というのがあります。実務上は銀行の通帳に記帳して、お金の動きが分かるようにメモ書きをしておくことで足ります。従って信託口口座のお金を動かすときは支払いも入金も出来るだけ口座同士で行った方が後から通帳を見たときに便利で分かりやすいはずです。当然ですがそれに関する見積書や請求書等の資料は保管しておきます。財産状況開示資料には、信託契約書の中の財産目録が使えます。変動があれば必要に応じて修正します。家族信託は信頼関係で成り立っている面があり、成年後見制度のような厳格な管理はありませんが、受託者自身の身を守るという意味でも最低限の管理はしておきましょう。