委託者を複数人にする場合

 一般的な家族では、委託者が親、受託者が子、受益者が同じく親、という構図が多いです。家族信託の設計は自由度が高いので、当然違うケースも可能です。例えば委託者を夫婦の2名とすることも出来ます。自宅の不動産を夫婦で共有しているようなケースでその不動産を信託財産にする場合はとても効果的です。この場合、受益権の割合を決めるときは不動産の持分の割合にすることをおすすめします。もしそれ以外の割合できめるならば課税の余地が生じるからです。夫婦の一方が先に亡くなったときに、亡くなった方が持っていた財産を残った一方に承継させ、夫婦ともに亡くなったときに残余財産を子に承継させるような契約内容にしておくと、財産の承継がとてもスムーズになります。

 ただし、共有財産と一緒に金銭も信託財産に入れるとするならば、金銭の割合も受益権割合に応じた額を信託財産にするべきです。もし異なる比率で預けると、受益権割合の差額分について無償の財産の移動が行われたとして贈与税の課税対象になります。

 前述の内容は、共有財産がすべて同じ持分割合のケースを想定した既述です。複数の共有不動産があっても全て同じ持分割合であれば良いですが、そうではなく不動産によって持分割合が異なる場合は、信託契約を1つにすることは避けるべきです。受益権割合は一つしか設定できないので、それから外れる持分割合の不動産には、差額分について贈与税の課税対象になるからです。

 まとめると、夫婦が一緒に委託者となるケースがおすすめできるケースとは、自宅不動産が夫婦共有であり、その他の不動産は無いもしくはあっても同じ共有持分である場合で、信託財産が不動産メインの場合です。これに該当しないケースでは信託契約を夫婦で分けて作成する方が良いと思います。