現物出資

 現物出資とは、会社を設立するときに、金銭以外の財産で出資することです。具体的な目的物には不動産、自動車、機械、その他の動産、有価証券、債権、特許権などの知的財産権等があります。現物出資は、出資する側にとって現金を用意する必要がありませんが、目的物が過大評価され、不当に多くの株式が付与される恐れがあり、他の株主や会社債権者を害する可能性があります。そこで会社法では、これを防ぐために、現物出資を相対的記載事項として、効力を発生させるためには原始定款に記載しなければならないとしています。

 なお、会社設立時には発起人だけが現物出資をすることが出来ます。募集設立時の募集株式の引受人は現物出資をすることが出来ません。現物出資の定款の記載方法は、下記のように対象財産を特定してすることが必要です。

 〇 不動産  : 登記簿の記載

 〇 債権   : 当事者 発生日 債権の種類 債権額等の記載

 〇 機械類  : 種類 型式 製造者 製造年 製造番号等の記載

 現物出資を定款に記載した後は、その記載の当否を、原則として発起人の申立てに基づく裁判所選任の検査役の調査を受けなければなりません。ただし、以下の場合は検査役の調査が免除されます。

 ① 現物出資及び財産引受けの各目的物につき定款に記載された価額の総額が500万円を超えていない場合

 ② 現物出資の目的物のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が、その市場価格として会社法施行規則6条により算定された額を超えていない場合

 ③ 現物出資の目的物について定款に記載された価額につき、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人等からその価額が相当であるとの証明を受けている場合

 実務上は①のケースが多いようです。なお、検査役の調査が免除される場合であっても、設立時取締役は、定款に記載された現物出資の価格が相当であること、弁護士等の証明が相当であること、出資の履行が完了していること等について調査を行う必要があります。