死後事務遂行時の留意点

 高齢者の財産管理の一環として死後事務委任契約があります。その名の通り、委任者である高齢者の死亡後に発効する契約です。従ってこの契約を締結した後の受任者は高齢者の死亡の事実を迅速に把握する必要があります。そのためには死後事務委任契約だけではなく、同時に見守り契約や財産管理委任契約を締結することが有用です。

 死後事務委任契約を締結する方というのは様々な点で問題意識の高い方ですので、見守り契約を締結して日常的に相談できる体制を整えておくことはとても効果的です。受任する側からしても、見守り契約の中で関わっていくことで、委任者の人柄や価値観、それまでの人生を知る上で重要なことです。

 死後事務というのは委任者の死亡直後の葬送から始まることが大半であり、契約内容にも葬送に関することを詳細に定めます。死亡の事実を連絡する先、通夜や葬儀の有無や形式、納骨・方法・場所等を委任者の考えを最大限尊重したものにします。この契約の存在や内容を知らなかった親族や遺族から疑義が出ることも十分考えられますが、死後事務の受任者としては委任者の意思や考えを丁寧に説明し、理解してもらえるように努めるしか有りません。遺族感情に適切に対応することも死後事務の重要な一部です。

 契約書の中で詳細に決めておくことは大切ですが、実際の現場では細かい点は委任者の希望に添えないケースが出る可能性があります。そのような場合に備えて死後事務委任契約の中で、受任者の裁量に一任する旨の条項をあらかじめ規定しておくと良いです。

 繰り返しになりますが、死後事務を遂行している段階では既に委任者は亡くなっていますので委任者の意思を確認することは不可能です。そのような状況で行う死後事務は必ずしも親族や遺族の意に沿うものであるとは限りません。受任者としてはあくまでも委任者の意思により活動しているという姿勢を保ち、そのことを根気よく説明することが大切です。