死後事務委任契約は委任者の死後の各種手続に関する内容を定める委任契約です。しかし民法653条では委任契約の終了事由として、委任者の死亡を終了事由として挙げています。この点最高裁判所の過去の判例で「委任者の死亡によっても右契約を終了させない旨の合意を包含するものというべく、民法653条の法意がかかる合意の効力を否定するものではない」と判示していて、死後事務委任契約は有効であるとの見解が出ています。しかしそうは言っても委任者の利害関係人から当該契約の有効性について争われないようにするためにも、契約書の中で委任者の死亡によっても契約が終了しない旨の条項を入れておくことをおすすめします。そうすることでスキの少ない契約書となります。
実務上では死後事務委任契約を締結する際には同時に任意後見契約や財産管理委任契約、遺言書などど組み合わせて締結するケースがあります。先の記事でも触れたように死後事務委任契約の締結をする人は問題意識が高い人が多いので、死後の事だけではなく生前からの備えもしておきたいと考えている人が多いように思います。とくにおひとりさまであれば死後のことだけでなく、生前から何らかの備えをしておきたいと考える人も多いのだと思います。
死後事務の内容は多岐にわたります。代表的なものでは
① 費用の支払、金銭の受領に関する事務
② 公的な届出に関する事務
③ 葬祭に関する事務
に分けられます。①の中身としては病院代の支払、家賃の支払、敷金保証金の受領、施設利用料の支払、公共料金や携帯電話代の支払があります。②は年金や介護保険の手続、パスポートやマイナンバーの窓口への届出等があります。③は葬送、納骨、供養、菩提寺の選定、死亡の連絡をする人の範囲決定に関する事務があります。その他遺品整理や相続財産管理人の選任申立てなど様々な事務が発生します。想定される基本事務一覧表をあらかじめ作成しておき、打ち合せ時に具体的に決めていくという方法が、漏れが無くて良いと思います。
最近ではSNSのアカウント削除も死後事務に含まれています。大手SNS業者でもそれに対応しつつあり、例えばFacebookでは「追悼アカウント管理人」を指定しておけばアカウントの削除をリクエストできるようになっています。Twitterでは個人の家族がアカウント削除できるようになっています。