その他の財産管理のための制度

 高齢者の財産を管理する契約として、見守り契約と財産管理委任契約をご紹介してきました。それ以外に法定後見、任意後見、死後事務委任契約、民事信託、日常生活自立支援事業があります。個別のカテゴリーの中で詳しく述べてきたものもありますので、ここでは制度の簡単な説明にとどめます。

 〇法定後見

  高齢者の判断能力が低下した後で取れる対策としては法定後見があります。判断能力の程度によって成年後見、保佐、補助の3類型があります。その累計の応じて代理権、取消権、同意権が付与されます。これらの権利を行使して高齢者の財産を管理していくことになります。後見人には専門職が就くことが多く、たとえ親族が後見人候補者として申請しても必ずその通りになるとは限りません。仮に後見人に親族が就くことが出来たとしても、専門職の後見監督人が別途選任されることがあります。

 〇任意後見

  高齢者が特定の受任者に対して、身上保護や財産管理に関する事務を委任する契約です。法定後見と違い、高齢者の判断能力が十分あるうちに公正証書で契約を締結しておくことを要します。将来高齢者の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申し立てをし、任意後見監督人が選任されたときにこの契約は効力を生じます。高齢者の判断能力がしっかりしている時から効力が生じる財産管理委任契約や見守り契約と併せて使うことも有効です。

 〇死後事務委任契約

  身寄りの無い人が、自分が死亡した後の処理を自分の希望する方法で実現することを第三者に委任する契約です。葬送や納骨、各種料金の支払、遺品整理、ペットの処遇、アカウントの削除など、細かく取り決めることが可能です。委任者の判断能力がしっかりしているうちに締結する必要があります。契約の効力は委任者の死後に生じます。よって委任者の死後の財産管理といえるでしょう。

 〇民事信託

  委託者と受託者との契約により設定される信託を民事信託(家族信託)と言います。受託者は親族が就くことが前提とされています。契約で決めた財産を委託者から受託者へ移し、以後は契約で決めたとおりに受託者が管理運用していきます。他の契約累計と異なり、投資など財産の積極的な運用も可能です。契約をするにあたっては初期費用は他の契約累計よりも高く付くことがありますが、その後のランニング費用は契約の内容によって安く抑えることが出来ます。