死後事務における生前住居の明渡し

 死後事務委任契約で受任者が委任者の生前住居を明け渡すことがあります。通常の賃貸借契約終了時と異なる点として、受任者の権限の明確化と費用の確保があります。

 賃貸借契約の解除は、相続人がいる場合は相続人の権限ですので、死後事務委任契約の中で受任者に権限があることを明確にしておく必要があります。賃貸人への解約通知は死亡直後すぐに行いましょう。遅れればそれだけ解約時期が遅れ、その分賃料が発生します。解約通知は口頭で行った後で書面でも行っておいた方が無難です。

 賃貸借物件の返還は、通常は鍵を変換する方法で行います。そのためスペアキーも含めた物件に関わる全ての鍵の所在を委任者から聞き取りしておかなければなりません。部屋の鍵だけではなく、物置や駐輪場の鍵がある場合もあります。もし鍵が足りなければ費用を請求されてしまうかもしれません。

賃貸物件を返還する際には、賃借人には原状回復義務があります。例えば壁紙を損傷していた場合などはその修繕費を請求されます。この原状回復費は以外と高額になるケースも考えられますので、その費用をどのようにして用意するのかを事前に委任者と話して決めておく必要があります。敷金は、物件を明け渡した後でしか返還請求できませんので、原状回復費に充当することは通常はできません。

 遺品などの残置物の処理をどのようにするのかも、事前に決めておく必要があります。生前に遺品整理業者へ見積もりを依頼しておき、その費用を確保しておく方法もあります。なお、遺品整理業者にも様々ありますので、信用できる業者を見つけておくことは案外重要だと思っています。

 あと細かいところとしては各ライフライン、新聞、ネット業者、電話、火災保険等の解約があります。