高齢者の財産管理の形態にはいくつかありますが、金融機関の預貯金管理については各形態毎に留意点があります。
〇 成年後見
成年後見人には、民法859条に基づき、被後見人の財産管理権がありますので、預貯金口座を新規に開設したり、解約したりすることができます。代理権付与をされた保佐人・補助人と、契約によって同代理権を与えられた任意後見人も預貯金口座の開設や解約することができます。
〇 財産管理委任契約
契約によって口座の開設・解約の代理権を与えられることは成年後見と同様ですが、金融機関が財産管理委任契約の代理人の求めに応じてくれるかどうかは事前に確認しておく必要があります。成年後見等は登記によって代理権が公的に証明されますが、財産管理委任契約では登記のような公的な証明資料がないからです。
〇 信託契約
信託契約で委託者の財産の管理を開始するときは、現口座を解約して新規に信託口口座を開設しなければいけません。預貯金債権は通常譲渡禁止債権であるからです。信託口座は一つ開設しておき、委託者の管理対象となる全口座から信託口座に集約します。信託契約へ対応していない金融機関も多くあります。事前に確認が必要です。信託財産額が1000万円を超えるときはペイオフ対策で信託口口座を増やすか、利息なしの口座にしてペイオフ対策をします。
高齢者の預貯金口座には、長年使用していない口座や、遠方に口座があることがあります。管理の負担を減らすためにそれらの口座は解約して、近くの金融機関の口座に集約することがあります。あるいはペイオフ対策で口座を新規に増やすこともあります。それらの行為は高齢者の財産管理の一環として、高齢者の代理人という立場で行います。財産管理委任契約で代理行為を行うときは、当該契約での代理行為を認める金融機関を選ぶと良いでしょう。