死後事務委任契約②

  死後事務委任契約を締結する際には契約書を作成します。この契約書はできれば公正証書で作成しておくべきです。その理由は、委任者の死後に効力が発生する契約の性質上、委任者の相続人などの利害関係者から疑義が出る可能性があるからです。公正証書であっても疑義が出るときは出ますが、私文書で作成した契約書よりは公証人が関与した契約書であるという点で、客観的な契約の公正さは保たれます。公正証書の中で委任者の意思を明確にしておけばより望ましいと言えます。

 死後事務委任契約は委任者の死後に発生する事務という点で、遺言書と関連性があります。遺言書を遺しかつ死後事務委任契約を締結する際には、双方の内容に矛盾抵触が生じないようにしなければいけません。その意味でも遺言書作成と死後事務委任契約書作成はできれば同一の専門職が行った方が良いのです。別々に作成するならばそれぞれ互いの内容を精査して作成するべきです。

 死後に係る費用や支出は、基本的には相続人か遺言執行者に委ねられます。そこで死後事務委任に係る費用や支出をどのように確保するかということですが、一番望ましいのは遺言執行者と死後事務受任者を同一人に指定し、遺言書の中で「別途作成する死後事務委任契約書〇条で記載した事務に係る費用・報酬を支払った後の残余金を〇〇に遺贈する」という文言を記載することです。

 死後事務委任契約はまだそれほど社会に浸透したものではありませんので、例えば金融機関が死後事務受任者という立場の人の依頼によって希望通りの対応をしてもらえるかは金融機関ごとに対応に差があるようです。この点は事前に確認しておく必要があります。

 死後事務委任の報酬は前記のように遺言書の中で明記してもらえれば良いのですが、そうでなければ報酬が確保できる策を事前に講じておく必要があります。例えば事前に委任者から受任者が預かっておく方法、信託銀行に信託する方法、依頼者が継続して管理して定期的に財産の変動を確認する方法等あります。それぞれ一長一短があり、委任者との話し合いによって決めていくことになります。