財産管理を複数人で行うとき

 高齢者の財産管理における契約・制度利用は必ずしも単独で行う必要は無く、複数人で行うこともあります。例えば身上保護は親族が行い、財産管理は専門職が行うというケースも実際あります。

 後見制度においても複数後見は利用されています。前述のように親族後見人と専門職後見人との権限分掌という形です。専門職後見人が付く背景としては、・親族後見人の負担軽減のため ・親族後見人の希望により指導監督をするため ・相続、障害等を踏まえた特別な事情があり専門職がサポートすべき時 ・親族後見人の後任者を用意しておきたいとき があります。

 後見人を複数人にする場合は、各後見人の権限を慎重に決める必要があります。権限の決め方には3通りあり、①単独行使 ②共同行使 ③事務分掌 です。①は各後見人が単独で全ての権限を行使できます。②は同じ権限を共同で行使します。③は権限を分け、分けた部分のみ権限行使します。

 単独行使ではそれぞれの後見人の権限行使に矛盾が生じないようにするため、後見人同士の連携が必須です。共同行使では、慎重な判断が期待出来る反面、後見人同士の意見が合わなければ後見事務が停滞してしまう恐れがあります。事務分掌は一般的によく使われており、親族と専門職の経験を活かした役割分担が出来ます。

 任意後見契約で複数後見を置く場合には少し工夫する必要があります。任意後見人を複数人にして共同行使の権限を定めた場合、後見人の一人が死亡等の理由で欠けたら、その時点で任意後見契約が全部終了してしまいます。事務分掌にしておけば一人が欠けても契約は終了しませんが、欠けた人が行っていた事務を代わりに行う人を就けることができません。それらの対策として、複数後見人の一人に全ての代理権を単独行使の形で付与しておいて、一方の後見人が事務を行うことが出来なくなったときに備えるという方法もあります。