自分に相続が発生した時に、相続財産が欲しくないときや、相続財産が借金などマイナスの財産ばかりである場合は相続放棄をする選択があります。相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述することが必要です。この3ヶ月というのは、申し出れば伸ばしてもらうことも可能です。また、相続財産が全く無いと信じ、かつそう信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の存在を認識した時から3ヶ月以内に申述すれば相続放棄できる場合もあります。相続放棄をすれば、その人は初めから相続人でなかったことになり、代襲相続も発生しません。
民法の旧940条1項では、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」とされていました。これが民法の新940条1項では「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保持しなければならない」とされました。
このように相続放棄をした者は、相続財産の管理責任を負いますが、空家の増加等により相続放棄をした者に過剰な負担が生じることがありました。この点、管理責任の発生要件を具体化し、相続放棄をした者の管理責任の発生要件を明確化しました。
なお、相続放棄をした者の管理義務は、後に相続人となる者に対する義務であって、隣地や地域の住民に対する義務では無いことは、国土交通省内の事務連絡で明らかです。