相続法改正と注意点

 平成30年以降、民法の相続に関する内容で改正がありました。時代のニーズを反映したもので、より便利なものになったと思いますが、注意点もあります。いくつか挙げていきます。

 〇 自筆証書遺言保管制度

  遺言書の形式の中の自筆証書遺言について、法務局が保管する制度ができました。従来は自筆証書遺言の保管は自己責任で行われており、紛失、改ざん、盗難の問題がありました。法務局に保管することでそれらの問題は解消されると考えられます。また、法務局で保管した自筆証書遺言書については、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要になります。法務局に預けなかった自筆証書遺言は、今まで通り検認が必要です。検認は時間がかかる上に法定相続人全てに検認の案内が行くので、相続人にとっては手間がかかるものです。また、封がしてある自筆証書遺言を検認前に開封すると5万円以下の過料が科せられるというリスクもあります。

  注意点:自筆証書遺言を法務局で預けたからといっても、法務局が遺言書の内容を補償してくれるのではありません。法務局が確認するのは、遺言書が形式に沿ったものであるか、という点のみです。従っていざ相続が発生して保管していた遺言書を見てみると、実現不可能な内容だった、ということは十分あり得ます。そのため自筆証書遺言を法務局に預ける場合でも、遺言書の内容は事前に専門家にチェックしてもらう方が良いと言えます。

  遺言書保管制度ができたことで、自筆証書遺言は以前に比べると採用しやすくなりました。しかし ・中身の事前チュエック ・遺言能力の有無の判断 ・自分で書くか、口授で済むか を考えればまだまだ公正証書遺言の方がおすすめです。

 自筆証書遺言と公正証書遺言の長所と短所をまとめます。

 【自筆証書遺言】

  長所: 作成費用が抑えられ、手軽に作成できる  誰にも知られずに作成できる

  短所: 様式に沿った作成をしなければ無効になる可能性がある  (保管制度を利用しなかった場合)紛失 盗難 改ざん の恐れがある 家庭裁判所で検認が必要になる

 【公正証書遺言】

  長所: 公証人が作成に関わるので実現可能性が高く、不備のない確実な遺言書を作ることが出来る 家庭裁判所での検認が不要

  短所: 作成費用がかかる 証人が2人必要