死後事務委任契約の依頼者は何らかの理由で身寄りがないことが多いです。その理由の一つに親族との不仲があります。依頼者の死後はその親族と接することもあり、葬送を含めた死後事務に関してクレームが出ることも予想されます。その対策としては出来るだけ詳細に死後事務の内容を契約書に記載し、正当性を確保することです。また、親族から悲しみや不満といった感情をぶつけられることも予想されます。そのようなときは専門職として冷静に対応することが大切だと思います。
次に遺留分侵害額請求のリスクです。これは遺言執行でも言えることです。前述のように親族との不仲が原因でおひとりさまとなった依頼者の場合、遺言書のなかで相続人の遺留分を侵害するような財産の配分を希望することが考えられます。不仲になった原因によっては相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性は高くなるでしょう。遺言執行者は遺留分侵害額請求をされた場合には当事者適格者がありませんので、依頼者を直接サポートすることができません。また受遺者からすればトラブルに巻き込まれるくらいなら遺贈を放棄するという気持ちも出るでしょう。対策としては依頼者が遺言書を作成する段階で遺留分について説明し、出来るだけ遺留分を侵害しない内容にすることをすすめます。それでも遺留分を侵害する内容にするときには事前に受遺者にリスクについて説明し承諾を得ておきます。受遺者に遺贈を放棄されてしまっては、その財産は相続人に帰属することになり依頼者の希望とは逆の結果になってしますからです。なお遺留分の放棄と相続人の廃除という制度がありますが、いずれもハードルが高くて現実的ではありません。あまりにもトラブルに発展する可能性が高いと思えば受任しないという選択肢も残しておく必要があると思います。