死後事務委任契約を締結しても本人は死後の手続きの結果を見届けることはできません。それでもこの契約を締結する意義とは何でしょうか。一つは人生の終わりも自己決定し自立した生活を送ることで、尊厳ある人生を実現する。もう一つは死の直前に感じる不安や苦痛、孤独感や寂しさを少しでも解消できることが挙げられると思います。言い換えれば生活の質と死への過程の質の向上が大きな目的と言えます。その目的達成のため、更に複数の契約を締結することも有益です。具体的には見守り契約、任意後見契約、尊厳死宣言があります。

見守り契約とは、定期的に安否確認を行うもので、孤独死のリスクを減らす目的があります。困ったときに相談できる相手と認識してもらえると良いでしょう。

任意後見契約とは、本人の判断能力が低下した場合に、指定した人が任意後見人となり本人をサポートしていく制度です。この契約を締結していなくて判断能力が低下したら、成年後見制度の適用となり、第三者の法定後見人が専任されますから、特定の人が引き続きサポートすることはできなくなります。最期まで判断能力が低下しなければこの契約は発効しませんので、保険やお守りのようなものとも言えます。

尊厳死宣言とは、終末期の治療方針について本人の意思を親族や医療関係者に示すものです。治る見込みの無い状態になったときに死期を延ばすだけの治療はしてほしくないという本人の思いを残します。依頼者の多くは身寄りのないおひとりさまですから家族ではない受任者が終末期の本人の意思を示すことに大きな役割を果たします。

そして最後に死後事務委任契約によって、本人の希望する手続きを執り行います。遺言書を残しておけば遺言執行も平行して行います。

このように死後事務委任契約はおひとりさまが尊厳あ る人生を送る手段の中の一つです。その他のいくつかの契約を組み合わせることでより手厚くサポートすることが出来るようになります。同時に受任する側は、依頼者の人生により深く寄り添う形になります。場合によっては相当長い期間に亘ります。決して中途半端な覚悟では務まらないと改めて思います。