被後見人が死亡したときは後見は絶対的に終了しますから後見人には後見の終了事務以外を行う権利義務はありません。しかし実務上では、後見人が遺体の引取や火葬埋葬を行うことがあります。本人に身寄りがなかったり、親族がいても遠方に住んでいたり協力的では無いようなケースで特に多いようです。その場合は応急処分義務や事務管理という民法で規定された法理に基づいて死後事務を行っていました。しかし応急処分により後見人が行うことができる範囲が明確では無いなどの不備がありました。このように後見人が死後事務の対応で苦慮することを受け、平成28年に民法が改正されています。その中で成年後見人は成年被後見人の死亡後にも、個々の相続財産の保存に必要な行為、弁済期が到来した債務の弁済、火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為等を行うことができるとされました。

しかし上記の改正の対応は成年後見のみですので、保佐や補助の類型には適用がありません。保佐や補助では従来通り応急処分義務や事務管理といった民法上の規定を根拠にして死後事務を行うこととなります。

なお、後見制度とは別に死後事務委任契約というものがあります。当該契約は本人と死後事務を行う者との間で委任契約を取り交わし、本人の死亡後に必要な手続きをすることを委託する契約です。死後事務委任契約に関しては別の機会に掲載していきます。