信託契約書は公正証書で

 民事信託契約書を作成するのに、信託法上で公正証書にすることが義務づけられているのではありません。しかし、公正証書にすることをお勧めします。その理由を以下に述べます。

 〇 契約書の紛失等の防止

  このことは何も民事信託に限ったことではありませんが、公証役場で作成した各種契約書は、原本を公証役場が保管します。よってもし将来紛失したり、火事で滅失したとしても公証役場に依頼したら謄本を再発行してもらうことができます。特に民事信託は契約期間が長期にわたる事が予想される契約ですので、将来のあらゆる可能性に備えて、公証役場で公正証書として作成するのが良いと思います。

 〇 公証人のチェックが入る

  民事信託契約書の原案の作成を行政書士等の専門家に依頼したなら、基本的に内容に不備があることはないはずです。その契約書を公正証書にする際には、公証人も内容を全てチェックします。そこで万が一法令に違反した事項や、無効な法律行為の制限により取消しうる法律行為については証書を作成することができません。つまり、契約書の内容をダブルチェックすることになるので、内容に確実性がアップします。更に公証人は契約書作成の当事者の意思確認も行いますので、契約書作成時に当事者には判断能力があったことがはっきりします。

 〇 信託口口座開設

  信託財産の中で、金融資産は信託口口座を開設して、その口座で管理運用していくことになります。現時点で信託口口座の扱いの有無を含めて金融機関の対応には差があります。当然その点は事前に確認していくことが必要です。中には信託口口座を開設をするためには民事信託契約書を公正証書で作成することを条件とする金融機関もあると聞いています。その意味でも、信託契約書は公正証書で作成することをお勧めします。