信託財産(預金)

 信託法上で「信託財産」とは、「受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分すべき一切の財産をいう」と規定されています。よって、あらゆる財産が信託財産にできるように思えますが、実際には他の法律によって信託財産とすることが禁止されていたり、実務上、信託財産とすることができないものもあります。以下、一般的な財産である預金を信託財産とする場合について検討します。

 預金は、現金を金融機関に預けることによって、預金者と金融機関との間で成立する消費寄託契約です。預金者は、金融機関に対して、預け入れた金銭の返還請求権(債権)を取得します。債権は、自由に譲渡できることが前提ですが、当事者間で譲渡禁止特約を付すこともできます。銀行に預けた預金はこの譲渡禁止特約が付いていることが一般的ですので、今の預金の口座情報等をそのまま信託財産目録に記載して信託財産に組み入れることは不適切といえます。

 ではどのようにするのかというと、信託契約書上は「現金〇〇〇〇万円」などのように記載します。契約成立後は、委託者が預金を解約(現金化)して、金銭として受託者に引き渡します。受託者は分別管理義務に従い、自己の固有財産と区別して管理します。(委託者の預金を解約すると同時に、新たに開設した信託口口座に送金することでも可能です)

 信託法上では信託口口座の開設を要求していませんが、金銭の取扱については信託口口座を開設して、そこで管理運用するのが一般的です。ただし、現時点で全ての金融機関が信託口口座の開設に対応しているとはいえません。家族信託契約設計段階で金融機関の対応も確認していくことが求められます。また、信託口口座に対する倒産隔離機能についても金融機関毎に対応が違うと言われていますで確認が必要です。

 信託口口座は、信託契約書作成後にその契約書に基づいて金融機関で開設するものですので、契約書作成段階では口座番号等の口座情報は分かりません。よって契約書には「信託財産に属する預金専用の口座による管理等を行うこととし、自らの固有財産とは分別して管理する」という内容の記載をします。さらに将来他の金融機関に変える必要が出ることを想定して、そのことも条文に盛り込んでおくと安心です。