家族信託契約では、委託者の財産は受託者の名義になり、管理運用も受託者が行います。家族内で信託をしていると言っても、大切な財産を契約で取り決めたとおりにきちんと管理運用しているかはチェックする必要があると言えます。その監督する権利は受益者にあります。しかし家族信託の形態で典型的な委託者=受益者で受託者が子どものパターンでは、受益者がいつまでも適切に監督できない可能性もあります。そこで信託法は場面に応じて・信託監督人 ・受益者代理人 ・信託管理人 の制度を用意しています。
・信託監督人
契約の時に信託監督人の定めを置いたときと、利害関係人が裁判所に選任申し立てをしたときに就任します。信託監督人は、受益者の権利行使を補完する立場ですので、受益者と共に受託者を監督する要素が強いと言えます。
・受益者代理人
契約の時に受益者代理人となるべき者を指定する定めを置いたときだけ就任します。受益者代理人は受益者の一権利の一切を行使する権限を有します。受益者は受益者代理人が就任した後は、自らの権利を行使することはできなくなります。
・信託管理人
契約で定めたほか、利害関係人が裁判所に選任申し立てをしたときに就任します。信託管理人は受益者の権利の一切を行使することができます。しかし実務上ではあまり登場していないようです。
このように信託法では信託行為の監督に関する規定を置いていますが、登場人物が増えれば家族以外の人が関与してくる可能性が高くなります。監督する人に支払う報酬も加算されるでしょう。家族内で管理監督ができればベストですので、いかに家族内の信頼・人間関係が大切か改めて考えさせられます。