高齢者の財産管理というテーマで考えるときには、多くの場合おひとり様の高齢者を対象者と考えます。しかし中には高齢の配偶者や障害をもつ子供の将来のために、今後の財産管理をしたいと思う高齢者の方もおられることでしょう。
これまでみてきた財産管理委任契約や任意後見契約や民事信託契約は、このような場合にも活用できるものです。例えば前述の例では、自分の財産をまずは配偶者に承継させ、その後に障害を持つ子供に承継させたいと考えた場合、遺言書ではなく民事信託を利用する方法があります。遺言書でも財産の承継はできますが、それは配偶者までです。その後に配偶者から子供へ承継させることを確実にするためには民事信託を利用します。なお、民事信託契約では本人の身上保護ができないので同時に任意後見契約等を締結しておきます。高齢の配偶者や障害を持つ子どもに判断能力があればそれぞれ財産管理委任契約等を締結し、判断能力が低下していれば後見制度を利用します。
もし本人が民事信託契約を締結せずに判断能力が低下してしまい成年後見等が開始すると、本人の財産は基本的に本人のためにしか使用することができませんので、配偶者や子供のために使うことができなくなります。家族の中に将来を案ずる人がいるときは、元気なうちに民事信託契約を締結して、その家族が安心して暮らせるように対策を講じておくことができます。