労災保険の補償対象は3つ

 労働者災害補償保険(労災保険)で補償される災害には「業務災害」「通勤災害」「複数業務要因災害」の3つがあります。

 〇 業務災害

   業務災害と認められるためには、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態(業務遂行性)と業務と傷病との間に因果関係が認められること(業務起因性)の2つが必要です。一般的には労働時間内に発生した事故については業務災害として認められやすいと言われています。

 〇 通勤災害

   ここでいう通勤とは「就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復すること」とされています。具体的には以下の3つのパターンがあります。

   ①家と会社の場所との間の往復 ②営業所間の移動など、就業場所間の移動 ③①の往復に先行し、または後続に関する住居間の移動(例:長期出張先から自宅に戻るときの移動)

   この規定によると、たとえば会社帰りに会食に行くために通常の通勤経路から外れたら、その後の事故は通勤災害になりません。一方で通勤経路から外れたとしてもそれが食料品の購入など日常必要な最小限の行為であるときは、通常の通勤経路に戻ったところから通勤災害として扱われます。

 〇 複数業務要因災害

   近年の副業や兼業の増加に伴って2020年9月より新設されたものです。複数の事業所で働く人が脳疾患・心臓疾患・精神障害となった場合に、1つの事業所では業務災害と認定されなくても、他の事業所での業務負荷を含めてトータルで判断評価して労災認定することが出来るようになりました。