家族信託と言うだけに、受託者は委託者の家族の誰かを選ぶことが多いようです。一番多いのは委託者の子どもが受託者になるケースでしょう。子どもが複数いるときは、委託者の近くに住んでいて、ある程度の事務処理能力があり、委託者から信頼を得ている人が最適と考えられます。受託者が委託者よりも先に死亡したときに備えて、後継受託者の定めをすることがありますが、その後継受託者には次に最適と思われる子どもを選任しておきます。
子どもがいない人は、法人を受託者にするか、金融機関で信託業務を取扱っているところを探して受託者になってもらう方法があります。法人に関しては現時点で私の知識が乏しいので省略します。金融機関については山口県では信託を扱っている金融機関は限られています。今後増加の可能性はあります。付け加えると、金融機関に信託設計を依頼するときの費用は、専門職に依頼するときと比較して割高感がある場合があります。専門職でも事務所毎に報酬設定をしているので一概には言えませんが、比較的最近注目されている制度だけに強気な価格設定をしているところもあると思った方が良いでしょう。
信託契約の中では、受託者の辞任や解任について定めておくことがほとんどです。家族間での契約と言っても将来どのような事情が発生するかは分かりません。人は順番通りに死亡するとは限らない、ということを念頭に置き、どのような事態になっても信託が継続できるように後継受託者を定めることは当然必要です。また、受託者の解任については契約書の中で別段の定めをしなければ「委託者及び受託者は、いつでも、その合意により、受託者を解任することができる」という信託法が適用されます。しかしそれでは高齢に伴い判断能力が低下した委託者が一時の感情にまかせて受託者を解任したりすることができてしまい不都合が生じます。その意味でも解任については別段の定めを置くことが大切です。