高齢者を詐欺被害から守るには

 高齢者が財産を管理して欲しいと思う背景には、近年増加している詐欺被害から身を守りたいというニーズもあるでしょう。これまでみてきた各種契約や制度は、そうした詐欺被害から高齢者を守ることにも効果があります。詐欺被害から守る方法としては、高齢者本人の判断能力がある場合と、既に無い場合とに分けて考えます。

 〇 高齢者に判断能力がある場合

  ・財産管理委任契約

   どの財産を委ねるかを高齢者自身が決めることが出来ます。委任契約ですので高齢者自身に判断能力があることが前提で、将来判断能力が低下したらこの契約は失効します。判断能力がある限りいつでも契約内容を変更することが可能です。この契約で財産の管理を他人に委ねたとしても高齢者本人に管理権限は残りますので、本人が財産を処分してしまうリスクはあります。

  ・任意後見契約

   判断能力があるうちに契約を締結しておき、判断能力が低下した段階で財産管理が開始します。まだ判断能力がしっかりしているうちは自分で財産を管理したいけど、将来判断能力が低下したら誰かに財産管理をして欲しいというニーズにマッチします。財産管理委任契約と異なり、任意後見監督人が就きますので財産管理を監督する目があります。

  ・民事信託

   既述のように財産の管理処分権限を受託者へ移しますので、高齢者自身が自ら処分してしまうリスクは減少します。よって詐欺被害防止に効果があります。

  ・日常生活自立支援事業

   社会福祉協議会が行っている事業です。高齢者の日常的な金銭管理や書類預かりサービスをしています。ある程度本人に判断能力があることが前提です。日常的な財産の管理を超えて、不動産などの重要な財産の処分はできません。日常的は金銭管理を社会福祉協議会の専門員が行いますので、詐欺被害に一定の効果が期待できます。

 〇 高齢者の判断能力が既に低下している場合

   法定後見の利用を検討します。後見人等には取消権がありますので、詐欺被害にあったとしてもその法律行為を取消すことで、高齢者の財産を守ることが出来ます。