高齢者の財産管理を行うときには、身上保護に関する事務が必然的に発生します。身上保護に関する事務とは、例えば住居の確保や施設の入退所、病院での治療、介護に関する契約事務があります。従って、対象となる高齢者の生活状況や身体状態によっては財産管理だけでは不十分であり、同時に身上保護も行う必要があります。
財産管理と身上保護を併せて行う典型的な方法は、成年後見です。ただし、成年後見は高齢者の判断能力が低下していなければ利用することはできません。まだ判断能力がしっかりしていれば、見守り契約または財産管理委任契約のみにして、その契約の中で身上保護に関する条項を可能な範囲で加えることが考えられます。あるいはそれらの契約にプラス任意後見契約を締結しておくことも考えられます。
ただし、民事信託契約では身上保護を行うことはできません。民事信託の受託者の職務に身上保護は含まれていないからです。もし民事信託で高齢者の財産を管理するなら、身上保護は成年後見または任意後見契約にて行うことになります。