● 信託契約をした後に、受託者が委託者の財産を子や孫へ贈与することはできません。受託者は委託者の利益のために財産の管理を行っており、忠実義務と善管注意義務があるからです。受益者代理人も同じく、受益者の直接の利益にならない贈与は、たとえそれが受益者の元気な時の意思だとしてもやるべきではありません。ただし、受益者の扶養家族に対して生活費や教育費などの実費を渡すことは問題ありません。委託者が受益者の扶養義務を代理しているに過ぎないからです。
● 信託契約の内容を変更するには原則は受益者と受託者の合意によって可能です。また信託法によれば受益者または受託者は、信託の目的に反しないこと等の条件を満たせばそれぞれ単独で変更することができることを規定しています。しかし実務では「受託者及び受益者の合意」を要件とする規定を置き、信託法よりも変更条件を厳しくしていることが多いと思います。これは信託の遺言代用機能を使う場合に、一度決めた内容を変更することに一定の規制をかけることで遺言の内容を確定させることにも寄与します。あと注意すべきは上記のように「受託者及び受益者の合意」を変更要件にしたら受益者の判断能力が低下してしまえば変更ができなくなりますので、受益者代理人を置くことも方法の一つです。