行政書士の業務②

 取扱い業務の幅がとても広い行政書士ですが、作成できない書類もあります。具体的には他資格者の独占業務にあたるものは扱えません。他資格者とは・弁護士・弁理士・公認会計士・不動産鑑定士・税理士・司法書士・土地家屋調査士・社会保険労務士・公証人などです。実はこの規定に違反して処分される例が少なくありません。特に税がらみの相談は注意が必要で、一般的な税の仕組みを教えるのはOKですが、税の具体的な計算はしてはいけません。具体的な計算は税理士の独占業務だからです。業際の判断が難しい場合は、書類の提出先で、ある程度判断ができます。例えば提出先が裁判所や検察庁であればNGです。特許庁や厚生労働省であればそれぞれ弁理士、社会保険労務士の独占業務だと推察できるのでNGの可能性が大です。とにかく自分を守るために最初のうちは判断が付きにくいものには手を出さないようにしようと思っています。

 本来行政書士が作成できる書類であっても、争訟性があれば扱うことはできません。例えば遺産分割協議書です。当初相続人間になんら争いが無い状態で業務を受任したとしても、途中から相続人同士に争いが生じた場合にはそれ以上その件に関わることはできません。その場合は速やかに弁護士に引き継ぐ必要があります。離婚協議書作成を業務として取り扱うことも注意が必要です。離婚すること自体にすでに争いの火種が隠れている場合があり、なんらかのきっかけで一気に紛争状態になりかねません。そうなったらやはり弁護士に引き継ぐことになります。

 しかし、「争えば行政書士が扱ってくれなくなる」ということを依頼人間に周知しておけば、そのこと自体が争いを未然に防ぐ効果もあると思います。弁護士に引き継ぐということは裁判に発展する可能性が高く、時間とお金と精神的負担が相当増えます。行政書士が関与しているうちに問題を解決できるのであれば、それに超したことはないでしょう。