成年被後見人の生前債務には、入院費、施設利用料、光熱費、通信費等があります。これらの生前債務は相続人が承継しますから後見人には支払う権利義務はありません。しかし実際には後見人が精算することが多いようです。精算する場合は、後のトラブル防止のために記録や資料を残しておきます。なお、相続人の代わりに相続債務を弁済しても、相続人に法定単純承認の効果は発生しませんので、相続人はそのあとで相続放棄をすることもできます。
被後見人が入院していたり施設に入所していたりした場合は、本人の残置物の引き取りを求められることがあります。この引き取り義務は本来相続人にあります。しかし相続人が引き取らないときは後見人がやむなく引き取りをすることもあります。
被後見人が借家住まいだった場合、賃借人の権利義務は相続人が承継しますので賃料の支払いや契約の継続の判断は相続人に委ねます。また、電気、ガス、水道等の解約は家庭裁判所の許可を得て、後見人が解約することができます。
被後見人に身寄りがないときは民法873条の2に準じて家庭裁判所の判断のもとで後見人が葬儀を行うことがあります。その場合にも費用や宗派、規模等の問題があります。その後の遺骨の引取りも同様に問題を含んでいます。
上記のように、後見人という立場で死後の事務を行うには様々な問題があります。それらの死後事務の問題を解決するために死後事務委任契約というものがあります。