行政書士として、家族信託設計業務にはどのようにしてかかわっていくのか、改めて確認していきたいと思います。
① 家族信託を選択する前段階
まずはご相談を受けます。その時点で家族信託をしたい、と決めておられる方はまだ少ないでしょう。初めは「老親の財産管理の方法で何か良いものはないか」といったような内容のご相談が考えられます。一通りお話を伺った後で、法定後見、任意後見、財産管理委任契約等のご案内に含めて、家族信託もご紹介することになると思います。各制度の長所短所を丁寧に説明して、最終的にどの制度を利用するのかは、ご相談者の側に委ねます。
② 検討の結果、家族信託を進めるというご連絡をいただけば、まずは委託者と受託者の意思確認を行います。ご相談時にはどちらか一方としかお話をしていないケースもありますので、この時点で早めに委託者と受託者2名の意思確認を行います。同時に制度の説明をして、これから決めていくことや、必要となる書類のご案内もします。見積書もこのとき提示して、ご了解いただいた上で進めることにしています。
③ 信託契約書の原案を作成します。最終的には契約書は公正証書で作成しますので、行政書士は原案の作成にとどまります。依頼者の方の事情とニーズに合わせたオーダーメイドの契約書ですので、何度か依頼者の方と打ち合せをしながら進めることになります。必要書類の収集も行っていきます。依頼者の方から依頼を受ければ、書類の収集も当方で代行します。
④ 契約書ができあがってくる頃になれば、信託口口座開設予定の金融機関と打ち合せを行います。契約書原案を持ち込み、この契約書で信託口口座開設が可能かどうか事前に確認しておきます。ここでの反応は金融機関ごとに違いが出る所だと思います。経験値がものをいうところでしょう。同時に、公証役場へ契約書原案と必要書類を送り、内容を確認してもらいます。必要に応じて加筆修正の指示がありますので、依頼者の方と話し合いながら修正していくべき所は修正します。また、実際に委託者と受託者が公証役場へ出向く回数も確認します。遺言書作成の場合は一度行けば済みますが、信託契約書の場合は二度行く必要が出る可能性があります。
⑤ 無事に公正証書で信託契約書ができあがれば、事前打ち合せをしていた金融機関にその契約書を持ち込んで、信託口口座を開設してもらいます。このときは受託者のみ行けば良いです。委託者は同席する必要はありません。行政書士の当方は同席を希望し同席させてもらいます。
ここまでが信託契約設計の業務です。この後は受託者の方の事務がスタートしますので、開設した信託口口座に委託者の金融資産を送金していったりします。