生活保護制度

 日本国民には生存権が補償されています。生存権は日本国憲法第25条で規定されています。

  日本国憲法第25条 1項

   「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

 この憲法により生存権を国民に補償することが初めて国の責務とされました。それまでも御救金、御救米、救護法などの公的扶助制度はありましたが、国家責務を明確にしていなかったり、差別的、限定的であったため不十分なものでした。昭和21年4月に「生活困窮者緊急生活援護要綱」が決定され実施されましたが、応急措置であったため、昭和21年9月10月に旧生活保護法が施行されました。その後社会の実情に合わせる形で昭和25年5月に現行の生活保護法が制定施行されています。

 では、なにが健康で文化的な最低限度の生活なのでしょうか。憲法では具体的な記載はありません。この点を争った有名な裁判例で昭和42年の「朝日訴訟」があります。行政書士試験向け参考書にはほぼ必ず載っている判例です。

 結論:「憲法第25条に規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。」「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても、直ちに違法の問題を生じることはない。」

 以上は朝日訴訟の判決文の一部です。憲法では健康で文化的な最低限度の生活について具体的に定めていませんが、これを具体的に定めるのが「生活保護法」なのです。