会社の発起人は、株式を引受けた後は、遅滞なく全額払い込みをしなければいけません。現物出資の場合はその全部を給付しなければいけません。この払い込みと給付を合わせて「出資の履行」といいます。金銭の払い込みは、発起人が決めた銀行・信託銀行等の金融機関の払込取扱機関の払込取扱場所でなされなければなりません。これは通常は指定された口座に振り込むことで行われます。払込が終われば金融機関から払込があったことを証明する書類を発行してもらいます。この書類は設立の登記を申請するときに必要な物です。発起人の中で出資の履行を行わない者がいれば、期日を定めて出資の履行を催告します。この期日までに出資の履行がされなければ株主となる権利を失います。
発起人が出資の履行を仮装した場合は、当然ながら会社に対して払込・給付をしなければいけません。出資の履行の仮装によって発起人が取得した株式を譲り受けた者は、悪意・重過失が無いときに限り、株主としての権利を取得します。出資の履行の仮装とは、実質的には出資の履行とはいえないがその外観を作出する行為をいい、具体的には「預け合い」と「見せ金」です。
預け合いとは、発起人が払込取扱機関と結託して払込取扱機関から借入れをしてそれを払込に充てますが、借入金を返済するまでは預金を引き出さないことを約束する行為です。見せ金とは、発起人が払込取扱機関以外から借り入れた金銭を株式の払込に充て、会社成立後にそれを引き出して借入金の返済に充てることをいいます。
預け合いも見せ金も、判例・通説によれば無効と解されています。